「ファンタスティック・ビースト」の意味

「ファンタスティック・ビースト」は "fantastic beast"

「ファンタスティック・ビースト」を英語のアルファベットに戻すと "fantastic beast" となります。 "fantastic beast" は「空想上の獣」という意味です。

ドラゴンやフェニックスなどRPGに登場する動物系(*)のモンスターを「幻獣」と呼ぶことがありますが、「ファンタスティック・ビースト」の意味としては、この「幻獣」がピッタリでしょう。
(*) 悪魔系やアンデッド系、神系などのモンスターに対して。

"fantastic" の意味

"fantastic" は「素晴らしい」という意味の感嘆詞や形容詞としてよく使われますが、それ以外に「空想上の・架空の」という形容詞としての意味も持ちます。

"beast" の意味

"beast" には「獣・野獣・けだもの・動物」という意味があります:
  • - 4本足の巨大な哺乳類(ライオン・熊・ヘラ鹿など)。 あるいは、それに比肩するような巨大な存在や人(暴走トラックなど)
  • 野獣 - ヒトと違って知性を持たない動物。 あるいは、そのような動物のような性質。
  • けだもの - 人としての理性・道徳性・品性が欠けている人間。 この意味から転じて、口語的に「やな奴」という軽い意味でも使われる。
  • 動物 - 植物ではない存在としての動物全般。

ハリー・ポッターにおける「ファンタスティック・ビースト」の意味

「ハリー・ポッター」シリーズでは、「ファンタスティック・ビースト」とは魔法生物(magical creatures)のことです。

「ハリー・ポッター」シリーズの映画のなかには、「ファンタスティック・ビーストと魔法使いの旅」や「ファンタスティック・ビーストと黒い魔法使いの誕生」といったファンタスティック・ビーストをテーマとする作品もあります。

ファンタスティック・ビーストの例

そして、この魔法生物とはドラゴン、バジリスク、ピクシー、サラマンダー、グール、ノーム、フェニックス、マンティコア、グリフォン、ユニコーン、トロール(トトロの語源)、ペガサス、イエティ(雪男)、ワーウルフ(人狼)、バンパイアなどです。 日本の河童も「ハリー・ポッター」の魔法生物として登場しています。

魔法生物のうちドラゴン、バジリスク(石化能力を持つ)、サラマンダー(火を吹く)は竜の一種なので爬虫類ですし、フェニックスは鳥類です。 マンティコアは胴体こそライオンですが、頭はヒトで尻尾はサソリという魔獣です。 ピクシーやノームにいたっては妖精の仲間ですし、グールやトロール、ワーウルフ、バンパイア、河童、イエティは2本足で歩くヒューマノイド(人型生物)です。

したがって、"beast" には「獣・野獣・けだもの・動物」という意味がありますが、「ファンタスティック・ビースト」の「ビースト」は「獣」や「けだもの」といった意味ではあり得ません。 「ビースト」を「動物」という意味に捉えれば、バンパイアはかろうじて「ビースト」かもしれません。 ピクシーやノームなどの妖精にしても、妖精をそもそも生物と言えるのかどうかが不明ですが、植物というよりは動物に分類されるでしょう。

「魔法生物」ではなく「ファンタスティック・ビースト」である理由

「魔法生物」という言い方にしておけば、アンデッドであるバンパイアや妖精が「ビースト」に含まれるかどうかで悩まなくて済むのに、どうして「ファンタスティック・ビースト」という映画のタイトルになったのでしょうか?

それは多分、「魔法生物」よりも「ファンタスティック・ビースト」とするほうが「幻想的」という意味においてファンタスティックディズニーな感じで子供たちにアピールするからでしょう。

この映画の原作ではリアリティを重んじ、物語世界の枠組みをきっちりと作り上げています。 そしてそういう世界の枠組みの一環として、"Magizoology(魔法動物学)" という学問のカテゴリーを設けています。 「魔法生物(magical creatures)」とは、この魔法動物学に登場する学問的な用語であると思われます。

つまり、"magical creatures" が学問的な用語であるために堅苦しくて難しそうな印象を与えてしまうというわけです。 それは "magical creatures" を日本語にした「魔法生物」も同じです。 そういう堅苦しさは子供向けの映画のタイトルには不向きなので、ファンタスティックでメルヘンチックでファビュラスなイメージの "fantastic beast" という表現にしたのでしょう。

"beast" が "animal" でなく "beast" なのにも、そういう計算が働いていると思われます。 "animal" が学術的な分野でも使われる言葉であるのに対して、"beast" は「美女と野獣(Beauty and the Beast)」にも使われるなどメルヘンチックなイメージがあります。

「ファンタスティック・ビーストと魔法使いの旅」というタイトルが仮に「魔法生物と魔法使いの旅」であったとすれば、ファンタスティックな印象は失われてしまいます。

また、「ファンタスティック・ビーストと魔法使いの旅」の原題は "Fantastic Beasts and Where to Find Them" というものですが、これが "Magical Creatures and Where to Find Them" であったなら、そのまま論文のタイトルとして通用してしまいそうな趣(おもむき)があります。