ファンタジー作品における魔法使いの種類と違い

ロールプレイング・ゲーム(RPG)やライトノベルなどのファンタジー作品には「ウィザード」や「メイジ」など様々なタイプの魔法使いが登場しますが、これらはどのように異なるのでしょうか?

魔法使いの種類

ファンタジー作品に登場する魔法使いの種類は一般的に次のようなものです:
  • マジシャン(magician)
  • ウィザード(wizard)
  • メイジ(mage)
  • マギ(magi)
  • ウォーロック(warlock)
  • ウィッチ(witch)
  • ソーサラー(sorcerer)
  • ソーサレス(sorceress)
  • エンチャンター(enchanter)
  • コンジュラー(conjurer)
  • ネクロマンサー(necromancer)

他にも色々なタイプの魔法使いが存在しますし、ファンタジー作品ごとに独自のタイプの魔法使いが考案されたりもしていますが、魔法使いとしての違いがよくわからないのは上記のものでしょう。

それぞれの意味

マジシャン

辞書には「ソーサラー」と同じ意味であるとか「ウィザード」と同じ意味であるとか「コンジュラー」と同じ意味であるとかの説明しかありませんが、"magician" という言葉の綴りからして魔法使い全般を広く意味する包括的な言葉でしょう。

ファンタジー以外では「手品師」という意味もあります。

ウィザード

「魔法を実践する者」という意味です。 "wizard" は "wise(賢い)" から派生してできた言葉です。 辞書によっては次のような意味も記載しています:
  1. 「ソーサラー」や「マジシャン」と同じ意味
  2. ウィッチの男性バージョン

メイジ

「マジシャン」と同じ意味です。 「ソーサラー」と同じ意味であると説明している辞書もあります。

マギ

「マギ(magi)」は「メイジ(mage)」の語源にあたる言葉ですが、「マギ」自体には「魔法使い」という意味はありません。 少なくとも辞書には「魔法使い」という意味が載っていません。

"magi" は「賢い者、賢者」を意味するラテン語 "magus" の複数形で、特に「東方の三賢者」という意味で使われます。 東方の三賢者はキリスト教の伝承に登場する人物で、イエス・キリストが幼い頃に贈り物を持ってきたと言い伝えられています。

「マギ」にはゾロアスター教の神官という意味もあります。

ウォーロック

黒魔術の使い手(特に男性)」という意味です。 ウォーロックの語源が「誓いを破る者・嘘つき・裏切り者」という意味を持つ言葉であることから、ウォーロックは邪悪な存在として扱われることが多いと考えられます。 ファンタジー作品でもよく悪役として登場します。

辞書によっては「ウォーロック」の項に次のような意味も記載しています:
  1. ウィッチの男性バージョン
  2. 「ソーサラー」と同じ意味
  3. 悪魔(デーモン)
  4. 悪魔に由来する特殊能力の持ち主

「悪魔に由来する特殊能力」とは黒魔術のことでしょう。 黒魔術では悪魔と契約を交わすことによって魔法を行使します。

ウィッチ

魔法(特に黒魔術)を使う人(特に女性)のことです。 逆に言えば、ウィッチは必ずしも邪悪ではないし、必ずしも女性ではありません。 「ソーサレス」と同じ意味であるとしている辞書もあります。

ソーサラー(ソーサレス)

ソーサラー(ソーサレス)には次の2つの意味があります:
  1. 魔法使い。 ウィザードと同じ意味。
  2. 邪悪な霊から得た超自然的な力を使う者。 黒魔術の使い手。

1の意味の場合は必ずしも悪い魔法使いというわけではありませんが、2の意味の場合は悪い魔法使いでしょう。

「ソーサレス」という名詞は「ソーサラー」という名詞の女性型で、「女ソーサラー」という意味になります。 ただし「ソーサラー」は男性限定というわけではなく男性も女性も指し得ます。

現在の多くのファンタジー作品の源流にあたるダンジョンズ&ドラゴンズ(D&D)というテーブルトークRPGにおいて、ウィザードは魔術書などで魔法を勉強することで魔法を使えるようになるのに対して、ソーサラー(ソーサレス)は本能的に魔法を使えます。

エンチャンター

辞書には「魔法使い」という意味のほか「魅了する者」という意味が記載されていますが、この「魅了する」というのは魔法的な(ファンタジー的な)意味ではないでしょう。

エンチャンターとエンチャント

エンチャンター」とは「エンチャントを行う者」という意味です。 「エンチャント(enchant)」は「~に魔法をかける、~を魔法で支配する、~を魅了する、~を虜にする」という意味です。

「エンチャント」の語源

"enchant" の語源は「~に呪文をかける」という意味のラテン語 "incantāre" なので、「魅了する」という意味よりも「魔法をかける」という意味のほうが先にあったのだと考えられます。

エンチャンターとは

したがって「エンチャンター」は、ことさらに魅了を専門とする魔法使いを指すわけではなく、魔法使い全般を指す言葉として使えるでしょう。
「アーサー王物語」にマーリンという有名な魔法使いが登場しますが、この「魔法使い」の原語に "enchanter" という語が使われることがあります(他には "wizard" や "magician" も使われる)。

付与魔術師?

近年のRPGでは武具に魔法で特殊な効果を与える(武器や防具の威力を高めたり武器に炎の属性を与えるなど)ことを「エンチャント」と称するため、「エンチャンター」という言葉が「物(や人)に魔力を付与する付与魔術師」という意味に受け止められるかもしれません。

性別

辞書によっては、「エンチャンター」を「男性の魔法使い」と男性に限定しているものもあります。 「エンチャンター」には「エンチャントレス(enchantress)」という女性型があるので、男女を区別したければ「エンチャンター(男性)」と「エンチャントレス(女性)」を使い分けるとよいでしょう。

コンジュラー

辞書で「コンジュラー」を調べると次のように記載されています:
  1. 霊を呼び出す人
  2. 魔法を使う人。「マジシャン」と同じ意味
  3. 「ソーサラー」または「ソーサレス」と同じ意味

「コンジュラー」という名詞の語源は "conjure" という動詞で、その意味は「魔法や超自然的な力で霊や悪魔を呼び出す」というものです。

「コンジュラー」という言葉に「召喚する」という意味が含まれるものの、「コンジュラー」は召喚を専門とする魔法使い(召喚術師)のみを指し示す言葉というわけではなく、ソーサラーと同様に魔法使い全般を指す言葉でしょう。

また、「ソーサラーまたはソーサレスと同じ意味」という記述から、「コンジュラー」が男性にも女性にも使える言葉であることがわかります。

「コンジュラー」には「手品師」という意味もありますが、おそらく「魔法使い」という意味が先にあって、そこから「手品師」という意味が生じたのでしょう。 「召喚」と「手品」では接点がありませんから。

ネクロマンサー

「ネクロマンサー」はRPGではわりとよく見かける職業(クラス)ですが、辞書には正式には記載されておらず、"necromancer" の項目には「ネクロマンシー(necromancy)の使い手」とのみあります。

そこで「ネクロマンシー」の意味を調べると、次のように記載されています:
  1. 死者の霊とコミュニケーションを取り将来を占う業(わざ)
  2. 魔法、黒魔術

ファンタジー作品では「ネクロマンサー」は「死霊魔術師」などと呼ばれ死体からアンデッド・モンスターを作り出す魔法を使うという具合に、死霊関係を一手に引き受けている感がありますが、辞書的な意味においては「ネクロマンサー」は「ソーサラー」や「コンジュラー」と死霊度において大差ありません。

まとめ

上記をまとめると、各種の魔法使いの違いは ①性別 ②善悪度 ③魔力の源という3点にしぼられます。

ウィザード/メイジ/エンチャンター/マジシャンは、この3点において特色がない魔法の使い手です。

魔力の源

ウォーロックには悪魔との契約により魔法を使うという特色が、そしてソーサラー(ソーサレス)/コンジュラー/ネクロマンサーには死霊を介して魔法の力を使うという特色があります。

善悪度

性質の善悪で言えば、ウォーロックはほぼ常に悪役です。 ソーサラー(ソーサレス)も邪悪な存在として扱われることがあり、コンジュラーも召喚するのが悪魔である場合には邪悪とみなされるでしょう。 そして、ネクロマンサーは意外にもさほど邪悪ではない感じです。

使い分けの指針

既存のファンタジー作品での魔法使いの扱いを見ると、魔法使いの呼称として「メイジ/ウィザード/ソーサラー(ソーサレス)」などのうちのいずれか1つを選んで用いる場合と、複数の呼称を用いて呼称ごとに異なる能力を設定する場合とがあります。

辞書的な定義においては各種の魔法使いの間に決定的な差異はありませんから、魔法使いの種類をいくつ登場させるかも、各タイプの魔法使いの設定をどうするかも作者の自由です。

例えば、"Words of Power" というファンタジー小説では、ソーサラーがメイジよりも能力的に一段優れる存在として描かれています(そしてソーサラーを指して男性には「ウォーロック」そして女性には「ウィッチ」という言葉が使われてもいます)し、"City of Bones" という小説ではウォーロックが悪魔と人間のハーフとして描かれています。

既存のファンタジー作品の影響で世間的なイメージが固まっている(例. ネクロマンサーはスケルトンやゾンビを作り出す)場合に、そのイメージに挑戦するような設定は難しいかもしれませんが、魔法使いの種類の区分に関して「その設定は間違っている」と指摘するに足る確固たる根拠はありません。

「魔法使い」全般を指す呼称

魔法使い全般を指し示す言葉としては「ウィザード」や「メイジ」や「ソーサラー」がよく使われますが、ご自分の作品の中で例えばウィザードとメイジの両方を登場させて両者を異なる存在として扱いたい場合には、魔法使いの総称(この例で言えばウィザードとメイジの両方を含む呼称)として「マジック・ユーザー(magic-user)」という言葉を使うとよいでしょう。

マジック・ユーザーとはその名の通り「魔法(magic)を使う者(user)」のことで、タイプを問わず何らかの魔法を使う者はすべてマジック・ユーザーに含まれます。