前置詞としての though

辞書には though は接続詞(後に主語+動詞が続く)としてしか載っていませんが、though が前置詞として使われるケースを見かけました。 以下は実例です:
Though an early stage animal model, the French study highlights the possibility of preventing ALD(alcoholic liver disease)with faecal microbiota transplantation.

「未だ動物実験の段階でしかなくて、これから臨床試験などで確認する必要があるけれども、糞便移植がアルコール性肝臓疾患の予防に有効かもしれない」と言っています。

"Though an early stage animal model..." という部分はおそらく、"Though (the study is in) an early stage animal model..." のカッコ内の部分が省略された結果でしょうが、このような使われ方が繰り返されるうちに前置詞としての though が一般的に認められて、辞書に記載されるようになるのでしょうね。

他にも用例が

さらに用例を調べてみると、下記のような文が見つかりました:
Though still in existence in some villages, amateur theaters were largely pushed out by television and films in the postwar era.

「アマチュアが運営する劇場は村落に戦後にも未だ部分的に残ってはいるものの、大部分はテレビや映画に取って代わられた」と言っています。

こちらの文でも "Though" の後に "amateur theaters are" が省略されていますが、こちらの用例の方が上記の用例よりも、「主語+動詞」が省略されているという感じが強くなります。 それは、なぜでしょうか?

though の後にいきなり名詞が来ていないためです。 接続詞の後には「主語+動詞」が来るのに対して、前置詞ではその後に「名詞」が来ますから、though の後ろにいきなり名詞(an early stage animal model)が来ている1つ目の用例では though が前置詞であるという感じが強まります。

こうして、「主語+動詞の明らかな省略」という2つ目の用例と比較すると、1つ目の用例は単純に「主語+動詞」が省略されただけとは言えないことが良く分かりますね。 考えてみれば、1つ目の用例では、"though" を接続詞として扱おうとするときに "the study is in" という具合に前置詞の "in" まで補っています。

言葉の繰り返しを避けるために重複部分を省略するときに、重複が無い語(ここでは "in")まで省略してしまうことはありませんから、もはや弁護の余地がありません。 1つ目の用例において "though" は前置詞として用いられています。 「主語+動詞」が省略された接続詞ではあり得ません。

逆に、"in" という前置詞の有無によって、though の品詞が決定されてしまったとも言えますね。