1.「ファンタスティック・ビースト」の意味
「ファンタスティック・ビースト」を英語に戻すと "fantastic beast"。 意味は「空想上の獣」です。
2. "fantastic" と "beast" の意味
2.1. "fantastic" の意味
"fantastic" は「素晴らしい」という意味の感嘆詞や形容詞としてよく使われますが、それ以外に「空想上の・架空の」という形容詞としての意味もあり、"fantastic beast" ではこちらの意味です。
2.2. "beast" の意味
"beast" の意味は「獣・野獣・動物」などです。
3. ハリポタにおけるファンタスティック・ビースト
3.1. ファンタスティック・ビースト=魔法生物
「ハリー・ポッター」シリーズにおいて、「ファンタスティック・ビースト(fantastic beast)」は「魔法生物(magical creatures)」と同じ意味です。
3.2. 魔法生物の具体例
ハリポタに登場する魔法生物は例えば、ドラゴン、バジリスク(1)、ピクシー(2)、サラマンダー(3)、グール(4)、ノーム(5)、フェニックス、マンティコア(6)、グリフォン(7)、ユニコーン、トロール(8)、ペガサス、イエティ(雪男)、ワーウルフ(9)、バンパイアです。 日本の河童も「ハリー・ポッター」の魔法生物として登場します。(1) 石化能力を持つ巨大な蛇。 拙著『「バジリスク」の意味は? えっ、バジルと関係が...?』に詳しい。 ハリポタの世界では体長15mほどで、石化能力と強力な毒を持つ。
(2) 妖精の一種。 ハリポタでは体長20cmほど。
(3) 火蜥蜴(ヒトカゲ)。 ファンタジー作品では炎のトカゲ。 ハリポタでは炎を食べる。 現実世界ではサンショウウオの英名。
(4) 食人鬼あるいは食屍鬼。 人を食べる鬼だが、ファンタジー世界ではアンデッド・モンスターとして扱われることも。 ハリポタではアンデッドではなく定命の生物として扱われる。
(5) 地の精、大地の小人。 ハリポタの世界では精霊ではなく生物。 体長はせいぜい30cmで、外見がジャガイモに似る。 地面を掘り植物の根やミミズを食べる。
(6) 胴体はライオン、頭部はヒト、尻尾はサソリというモンスター。 ギリシャ神話に登場する。 ハリポタのマンティコアは他作品のマンティコアと大体同じ。 人の言葉を話し、尻尾の毒は強烈で、皮膚は大部分の魔法を無効化する。 肉食で危険なモンスター。
(7) 上半身(前足・翼・頭部)がワシで、下半身がライオンというモンスター。 これもギリシャ神話に登場。
(8) 英語に戻すと "troll"。 ジブリ・アニメの「トトロ」の語源とされる。 ハリポタでは体長3.5mほどの巨人で、力持ちだが頭が悪い。
(9) 人狼。 英語に戻すと "werewolf"。 "wolf が「狼」の意味。 "were-" の部分に「人」の意味がある。
3.3.「魔法生物」ではなく「ファンタスティック・ビースト」である理由
「魔法生物」という言い方なら、妖精やアンデッドであるバンパイアが「ビースト」に含まれるかどうかで悩まないのに、どうして「ファンタスティック・ビースト」という映画タイトルなのでしょうか?
それは多分、「魔法生物」よりも「ファンタスティック・ビースト」とするほうがファンタスティックでディズニーな感じで子供受けが良いからでしょう。
この映画の原作ではリアリティを重んじ、物語世界の枠組みをきっちりと作り上げています。 そして、そういう世界の枠組みの一環として、"Magizoology(魔法動物学)" という学問のカテゴリーを設けています。 「魔法生物(magical creatures)」は、この魔法動物学で使われる学術用語でしょう。
学術用語である "magical creatures" は堅苦しくて難しそうな印象を与えます。 それは "magical creatures" の訳語である「魔法生物」も同じです。
そういう堅苦しさは子供向けの映画のタイトルに向きません。 そこで、メルヘンチックでファビュラスなイメージの "fantastic beast" という表現にしたのでしょう。