"rap a verse" と "kick a verse"
まず、"kick a verse" は "rap a verse" と同じ意味だと思われます。 STASHEDというサイトで、これらの表現が同じ意味で使われているからです:そして、後で述べるように "kick the verse" は "kick a verse" と同じ意味です。
"rap a verse" の意味
それでは、"rap a verse" という表現の意味について考えて見ましょう。 "rap a verse" も辞書には載っていませんが、「ラップで歌う」という意味でしょう。 "rap" だけでも「ラップで歌う」という動詞の意味があり、これは辞書にも載っています。 また、"verse" には「韻(ライム)を踏んだ詞」という意味があります。
したがって、"A$AP Rocky raps a verse from upcoming album." は「A$AP Rocky(著名なラッパー)がリリース間近のアルバムの曲をラップで歌った」という意味でしょう。 この文の "from" の使われ方からすると "verse" に「ラップの曲(詞)」という意味がありそうです。
"kick a verse"
そして、問題の "kick a verse" ですが、これが "rap a verse" と同じ意味であるのは "kick a verse" 以外の部分を日本語にしてみると明らかです。"kick a verse" も「ラップの曲を歌う」という意味だと考えて間違いないでしょう。 "kick a verse" の語感まで再現するなら「詩(うた)を演(や)る」という感じでしょうか。
"kick a verse" と "kick the verse"
"kick a verse" と "kick the verse" は同じ意味です。
"kick a verse" が使われるか "kick the verse" が使われるかは文脈により決まります。「文脈の違い」とは、そこまでの会話や文章において当該の "verse" に一度でも言及されているか、それとも当該の "verse" が初めて会話や文章に登場したのかということです。
会話の相手や文章の読み手が「ああ、あの "verse" のことだな」とわかるようにして "verse" という語が使われるときには、"the verse" となります。
"kick the verse" の使用例を以下に挙げておきます。日本での認知度に差
"kick the verse" で検索すると日本語のページばかりがヒットします。 一方、"kick a verse" や "rap a verse" や "rap the verse" は英語のページばかりがヒットします。
日本の人気ミュージシャンが "kick the verse" を使ったために、日本では "kick the verse" という表現が突出して広まっているのでしょう。
"kick a rhyme" という表現も
"kick a rhyme" という表現も見つかりました(出典)。 "rhyme(ライム)" は「韻」という意味なので、"verse" と同じような意味になります。 "kick a rhyme" の意味も "kick a verse" と同じでしょう。"kick the verse" は固定的な表現ではない
"kick a rhyme" の例文が記載されているページには、"write a verse(詩を書く)" と "kicked a verse" という表現も登場します。 同じページに "write a verse" が登場することから、"kick a verse" や "kick the verse" という表現がやはり熟語ではなく、"kick" と "verse" がそれぞれ個別的に用いられていると考えられます。
つまり、状況やニュアンスに応じて、"kick" や "rap" といった動詞、"verse" や "rhyme" といった名詞、そして "a" や "the" あるいは名詞の複数形を示す "-s" が自由に組み合わされ使用されるわけです。 その証拠に、"kicked some verses" で検索しても使用例がありました。