正しい意味を教えて!「ノーセンキュー」や「ノーサンキュー」の!

質問:「ノーセンキュー」や「ノーサンキュー」とは、本当はどういう意味ですか?

回答:「いいえ結構です。お気遣いありがとう」という意味です。

詳しくは以下をご覧ください。

1. 英語に戻すと

ノーセンキュー」も「ノーサンキュー」も、英語に戻すと "No, thank you."。 この "No, thank you." の意味が「いいえ結構です。お気遣いありがとう」です。

2. 使われ方

"No, thank you." は「~をしてあげようか?」と尋ねられたときに、感謝しつつその申し出を断る表現です。

"Shall I make you something to eat?"

"No, thank you."

「何か食事を作りましょうか?」

結構です。お気遣いありがとう

3. カタカナ語における誤用

3.1. どんな間違い?

カタカナ語の「ノーセンキュー(ノーサンキュー)」は、不要な物や迷惑な物を「結構です!」や「お断り!」とキッパリ断るのに用いられている節(ふし)があります(例えば「そんな政策ノーセンキュー!」)。

でも、この使い方は間違いです。 「正しい用法」と「誤用」は申し出を拒絶する点では同じ。 ですが、両者は次のように異なります:

  • 正しい用法 ・・・ 厚意に対して感謝しつつ断る(結構です。お気遣いありがとう)
  • 誤用 ・・・ 好ましくない物をお断りする(そんなのお断り)
「ノーセンキュー(ノーサンキュー)」の誤用は、"No, thank you" を「感謝(センキュー)が無い(ノー)」すなわち「感謝しない」の意味に誤解した結果でしょう。

3.2. なぜ間違いなのか

"No, thank you." で "No" の後ろにカンマ(,)が入っていることから分かるように、「ノーセンキュー(ノーサンキュー)」は「ー」と「センキュー」で意味が隔てられます。

"No" に対応するのが「いいえ(結構です)」で、"thank you" に対応するのが「(お気遣い)ありがとう」です。
"Thank you." の意味は「(私は)あなたに感謝します」。 "Thank you." は "I thank you." の "I" を省略した表現です。 この "Thank" は「感謝する」を意味する動詞。

4. 用例

"No, thank you." の正しい意味の確認を兼ねて、もう少し例文を見てみましょう:

"Shall I help you?"

"No, no, thank you, Mrs. Alice. But I can manage."

「手伝いましょうか?」

「いやいや結構です。お気遣いありがとう、アリスさん。 ひとりで大丈夫です」

"Would you like a slice of pie?"

"No. No. Thank you, but no."

「パイを一切れいかがかしら?」

「いや、いらない。 ありがたいが結構だ」

"Do you want another dish? I would be more than happy to make one for you."

"No, thank you anyway."

「もう一皿どう? 喜んで作るわよ」

「もう結構です。 お気持ちだけ頂いておきます」
最後の例文に出てくる "anyway" の意味は「とにかく」や「どの道」といったところ。 したがって "Thank you anyway" の直訳は「とにかくありがとう」です。
"thank you anyway." とは、「(申し出は断るけれど、申し出を受けるか否かにかかわらず)いずれにせよ厚意には感謝します」ということ。

5. 英語圏でも誤用?

英語圏の人も "No, thank you." の意味を誤解している節(ふし)があります。

5.1. 誤解の内容

誤解の内容は、英語圏における誤解の内容は、"No, thank you" を「結構です(不要です)」の意味に捉えるというもの。 カタカナ語「ノーセンキュー」の誤解に同種ですが、拒絶の激しさが軽微です。

5.2. 誤解の証拠

英語圏の一部の人が "No, thank you." の意味を誤解しているのは、"Thank you but no thank you" という慣用表現の存在により明らかです。

"Thank you but no thank you" は「厚意には感謝するが結構です」という意味で使われます。

でも、"No, thank you." の意味を正しく理解していれば、"Thank you but no thank you" なんて言い方は出てきません。

"No, thank you." の正しい理解に即して "Thank you but no thank you" を直訳すると次の通り:

厚意には感謝する(Thank you)。 でも結構です(but no)。 厚意に感謝する(thank you)。

同じ言葉が無駄に繰り返されるうえ、相当にぎこちない言い回しです。

5.3. 誤解が発生するステップ

"Thank you but no thank you" は次のステップを経て生まれたのだと思います:

  1. "No" と "thank you" という2つのパーツから成る "No, thank you." が、1続きの表現 "No thank you" だと認識される。
  2. それによって「結構です。しかし厚意には感謝する」だった "No, thank you" の意味が「結構です」へと変質する。(*) 同時に、"No thank you" が「ありがたくない」というニュアンスを含むと誤解する。
    (*) この際の類推は恐らく次の通り: "No thank you" → 感謝しない → ありがたくない → 不要です(結構です)
  3. 「他人の厚意断るときに『ありがたくない』という気持ちが根底に流れる言い方を用いるのは失礼では?」と考える人が出てくる。
  4. 誰かが「『結構です(No thank you)』の前に謝意(Thank you)を述べておけば失礼度が緩和される!」と思いつく。(おそらく、こう思いついた人は複数存在し、今もこう思いつく人が新たに生まれている)
  5. "Thank you but no thank you." が「ありがたいが結構だ」の意味で流通する。

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