「エールを送る」は和製英語?

1.「エール」は "yell"

日本語で「激励する」とか「声援する」の意味で「エールを送る」と言います。 この「エール」の由来は英語の "yell(イェル)" です。

2. "yell" の基本的な意味

"yell" の基本的な意味は「叫び声をあげる」です。

2.1. 叫び声の理由

叫び声をあげる理由は次のように様々です:

  • 痛み・驚き・恐怖などで自(おの)ずと出てしまう叫び声
  • 何かの目的で意図的に出す叫び声

2.2. 用例

次に "yell" の用例を記載します。
She yelled at the pain.
彼女はその痛みに叫び声をあげた
I yelled to her from the roof but she couldn't hear me.
彼女に向かって屋根から大声をあげたが彼女に聞こえなかった。

"yell" には「叫び声」という名詞の意味もあります。

3. "yell" と「エール(応援)」

3.1. 動詞の "yell"

一部の英和辞典は、"yell" の項に「エールを送る」という動詞の意味を記載します。
つまり、こうした英和辞典によると "yell" の一語で「エールを送る」という意味になる。

しかし、実際には "yell" だけで「声援する」という意味にはならないようです。 つまり、動詞 "yell" の意味は「大声を出す」に過ぎず、そこに「声援」的な意味の言葉を付加して初めて、「声援を送る」という意味になるようです。

次の例文では、"encouragement" が「声援」的な意味の言葉です。
Spectators clapped, cheered, and yelled encouragement.
観客は拍手喝さいし、声援を送った
# "encouragement" の意味は「励ましの言葉」。 この "yell" は他動詞で、その目的語が "encouragement"。 "yelled encouragement" の直訳は「励ましの言葉を叫んだ」。
次の例文で、"yell" の意味は「声援を送る」ではなく「歓声を上げた」でしょう。 タッチダウンで得点を取った後に出す大声は声援よりも歓声でしょうから。
After the team scored a touchdown, the cheerleaders yelled for the team.
タッチダウンを決めたチームに、チアリーダーたちは歓声を上げた。
次の例文はスポーツの場での話ですが、"yell" が「声援する」の意味ではありません。
The coach yelled at the team after they lost the game.
コーチは試合に負けたチームを怒鳴りつけた

3.2. 名詞の "yell"

英英辞典を見ると、(英国ではなく)米国やカナダの英語に限り "yell" に「エール(応援)」という名詞の意味を記載します。
「エールを送る」という動詞の意味を記載する辞書はありません。

そして、「エールを送る」に相当すると思われる "send a yell" という英文で検索すると、いくつかの文が見つかります。

ですが...

"send a yell" を「声援する」の意味で使うのは日本人だけ?

"send a yell" が「エールを送る」で使われるのは、いずれも日本人が書いたと思われる英語でした。

例えば次の文。「宮崎先生」という名前から察するに日本人による英語でしょう。
Mr. Miyazaki also sent a yell to the students.
宮崎先生は学生たちにエールを送った

「声援する」の意味ではない "send a yell"

次の用例の "send a yell" の意味は「声援する」ではありません。
sent a yell to taunt
大声で挑発した

4. 結論

「エールを送る」は和製英語かもしれません。

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